- 看護師から行政保健師に転職する方法が知りたい
- 看護師からの転職組は不利なのか…?
- 自治体選びと就活の進め方が分からない…
看護師から行政保健師への転職を考えている人は、転職するためには何をすればいいのか、転職組でも公務員試験に合格できるのか、転職活動をどう進めればいいのかといった疑問や不安があると思います。
この記事では看護師から行政保健師への転職を検討している人が知っておくべきことを簡潔にまとめています。
私自身、看護師を7年経験した後に働きながら行政保健師への転職をした経験があります。
この記事を読むことで、看護師から行政保健師に転職しようか迷っている人が持ちやすい疑問を解消することができます。
転職の最終目標は公務員試験への合格
簡単に言うと、保健師の国家資格を持った上で公務員試験に合格すれば、誰でも行政保健師として働くことができます。
転職までに知っておくべきこと、考えておくべきことはたくさんありますが、最終的な目標は公務員試験への合格です。
看護師と行政保健師の大きな4つの違い
看護師と行政保健師は仕事内容が大きく異なるので、生活スタイルや価値観も大きく違います。大きな違いとして以下の4つを紹介します。
- 夜勤があるかないか
- シフト勤務か暦通りの勤務か
- 体力勝負かデスクワークか
- 医療か保健か
① 夜勤があるかないか
行政保健師には夜勤がありません。都道府県保健師では、24時間365日体制で警察官からの連絡を受けての精神保健の緊急対応があるため、交代で待機当番がありますが、夜勤として出勤するわけではありません。
一般的な仕事と同様に、日勤の仕事のみを送る毎日になります。
暦通りの出勤です。
② シフト勤務か暦通りの勤務か
看護師は基本的にシフト勤務なので、土日祝日は関係ありません。
保健師は暦通りの勤務になるので平日仕事に行って、土日祝日は休みです。看護師のように日勤帯、夜勤帯の申し送りもありません。
特に重要な事業や、急いでやらなければならない仕事を誰かと共有していない限り、急な休みでも誰かに迷惑をかけることはほぼありません。
③ 体力勝負かデスクワークか
看護師は常に身体を動かして夜勤もこなすのでハードワークです。一日のスケジュールに加えてイレギュラーな出来事が多く、心身ともにかなり消耗します。頭も使いますし体力も必要です。
保健師はデスクワークの時間が多いです。訪問や事業で動く日もありますが毎日ではありません。基本的にパソコンで資料作成やメール対応をしたり、電話対応、研修会等の企画をしていることが多いです。
場合によっては、看護師が一日のうちに座る時間くらいしか保健師は席を立っていない日もあります。それくらい看護師と保健師の運動量の差は大きいです。
④ 医療か保健か
看護師は主に病院での治療をサポートするので、医療寄りです。病気が良くなることを第一に入院生活の援助を行います。得られる知識や技術も医療の部分が大半を占めます。
保健師は地域での健康的な生活をサポートするので、保健活動が業務の中心になります。心身ともに健康的な日常生活を送るためにはどうしたら良いのかを考える予防に力を入れる分野です。
看護師としての臨床経験はあった方がいいのか?
行政保健師には、看護師の臨床経験がある人とない人がいます。「まずは看護師の臨床経験を積んでから…」、「奨学金の関係で決まった年数は病院で働かないといけない」という人もいます。
結論、臨床経験はあるに越したことはありませんが、別になくても全く問題ありません。
- 臨床経験はあれば役に立つが必須ではない
- 臨床で得られる社会経験の方が重要
臨床経験はあれば役に立つが必須ではない
看護師の臨床経験で得られるものは大変貴重です。実際に病気の患者をみて、医療現場の中で医学を目の当たりにして看護を実践してきた人は、勉強では身に付かない知識と技術を持っています。
病気の予防や健康増進のためには、身体のことや病気のことを知っている方が当然有利になります。
ただ、行政保健師の大半が看護師としての臨床経験がありませんし、あえて重要視する動きもないので特別な理由がなければ必須ではありません。
中には、「保健師を辞めて看護師になる時に、看護師経験がないと困るから。」という理由で、保健師になりたいけどとりあえず看護師として就職するという人もいます。
結論、新卒にしか学べない看護技術なんてものはありませんので、単純に保健師になりたいのであれば素直に保健師を目指した方が賢明です。
行政保健師の就職は簡単ではないので、時間のある若いうちに行動しておいた方が就職できる確率は上がります。
臨床で得られる社会経験の方が重要
看護師が臨床で得られる社会経験は想像以上に大きいものです。
- ハードワークに耐えられる強靭な体力
- イレギュラーなことに瞬時に対応する判断力
- メンバーと協働して課題を解決するチームワーク
- 高い対人コミュニケーションスキル
- 病気や身体が不自由な人への理解
どれをとっても厳しい臨床経験でしか得られない財産になり得ます。医療の知識や技術よりも、厳しい臨床で培ってきた社会経験の方が貴重です。
看護師からの転職を考えている人は、社会性を武器に公務員試験を乗り越えましょう。
看護師からの転職組は不利なのか?
行政保健師は大きく分けて、『新卒からなる人』と『看護師から転職する人』の二種類です。
結論から言うと、どこの自治体も新卒採用の方が多いです。当然ですが、研修制度やキャリアラダー制度も新卒1年目からスタートすることを前提に作られています。
病院の看護師も新入職員は新卒ばかりなのと同じことです。かといって、看護師からの転職組が不利なのかというとそんなことはありません。
- 合格難易度とは関係がない
- 転職者が複数いると潰し合いになる
- 臨床経験は大きな武器になる
- 看護師経験者は重宝されやすい
合格難易度とは関係がない
公務員試験の合否は点数化されて決定します。受験資格を満たした受験生全員を平等に点数化して点数の高い順に採用します。
面接においては当然、看護師からの転職者として面接官が求める人物像に近いかどうかという指標で評価されますが、転職者だからという理由で減点されることはありません。
社会経験が違うので、面接や小論文での評価指標は新卒と転職者で異なるのは当然です。
転職者が複数いると潰し合いになる
例えば、ある年の自治体の保健師の募集が5人だったとします。受験者の内訳が、「新卒者15人」、「転職者3人」の場合、転職者3人が全員合格することはまずないでしょう。
やはり合格者の比率は新卒者の方が多いです。個人的な見解でいうと、確かに受験者を点数化して上から採用するのが基本ですが、最終的にある程度の調整はしているのではないかと思っています。
もし、この自治体が「転職者の採用は1人にしよう」と内々に決めていたのであれば、3人の転職者がどんなに優秀であっても2人は不合格になるということです。
私は人事ではないので中のことは分かりませんが、バランス調整は内部で行われているでしょう。
臨床経験は大きな武器になる
看護師が臨床で得た社会経験は貴重な財産です。
看護師と行政保健師の仕事内容は大きく異なりますが、自治体は即戦力が欲しくて採用試験をしているわけではありません。長い目で見て自治体にとって採用するメリットが大きいかで判断します。
知らない仕事は誰でも覚えればできるようになります。大事なのはどう覚え、考え、活用するかです。この思考のプロセスは看護師という病院社会で培ってきた土台があってこそ発揮できるものです。
看護師経験者は自身の強みを医療の知識や技術に目を向けがちですが、本質的な強みは社会人経験による社会性と業務遂行能力です。
面接や小論文ではここを猛アピールしましょう。
看護師経験者は重宝されやすい
医療の知識と技術がすべてではないと書きましたが、実際はあればあるほど良いです。
住民の健康を考えるには病態や解剖生理学を理解していた方が良いに決まっています。採血業務や感染症対応があった時には採血の技術や個人防護具着脱の技術が役に立ちます。
それだけではなく、看護師経験者は先読みして手早く仕事を片付ける能力が高いです。実際に何人かの看護師経験者と一緒に仕事をしてきましたが、多重業務の激務が当たり前の中で働てきた人達なので、仕事のスピード感が全然違います。
仕事の早さと的確さは新卒から行政保健師になった人にはないものを持っているので看護師経験者は何かと重宝されやすいです。
看護師として得た能力は一生モノです。
自治体選びや就活の進め方は?
行政保健師に転職するにあたり、どこの自治体を選ぶのか、就活はどのように進めたら良いのか悩んでいる人も多いでしょう。自治体の選び方や就活のコツを解説します。
- 受験自治体は多くても3つ程度にした方が良い
- 就活は思いのほか忙しい
受験自治体は多くても3つ程度にした方が良い
公務員試験には一次試験、二次試験があり、日程も自治体によってバラバラです。最終合格後も『最終意向確認』として、希望部署や入職意思を確認するための面接を実施する自治体もあります。
日程の調整に加えて、自治体ごとに試験対策をするのはかなり骨の折れる作業です。看護師として働きながらの転職を目指すのであれば、せいぜい3つ程度の自治体に絞って受験する方が良いです。
私は2つの自治体を受験しましたが、それでも結構ハードでした。
自治体規模で選ぶ
自治体選びは基本的には『都道府県』か『市区町村』の2択で選択することになります。
自治体の規模によって業務内容や人事異動の特徴、勤務場所も大きく変わるので、どこの自治体を選ぶかはまず自治体の規模で選択をするようにしましょう。
業務内容で選ぶ
同じ行政保健師でも都道府県と市町村では業務内容が大きく違います。
大雑把に言うと、感染症や精神保健、難病、研修会の企画などに関心があれば都道府県が向いています。
一方で、乳幼児健診をはじめとする母子保健、健診や保健指導をはじめとする成人保健などに関心があれば市町村が向いています。
業務に関する興味、関心、適性に合わせて都道府県なのか市町村なのかを選択するのが基本です。
住みたい場所で選ぶ
住みたい場所があるので、そこの自治体を受験するという人もいます。移住したので、そこの自治体を受験するという人もいます。
注意した方が良いのは、都道府県の行政保健師の場合は、都道府県内での異動があるので、面積の大きな都道府県の場合は引っ越しや単身赴任が必要な異動もあるということです。
就活は思いのほか忙しい
看護学生の人は実習や試験勉強、アルバイトなどで忙しい中で何度も試験を受けなければなりません。
転職する人は看護師として夜勤をしながら、その都度休みをとって試験を受けなければならない人もいます。
日常生活の中で複数の科目の試験を何度も受けるのは思っている以上に大変なことです。手当たり次第試験を受けるのは、限られた時間の中で全ての対策が中途半端になります。
自分が確保できる時間と対策できるキャパシティをしっかり計算した上で、受験する自治体を絞った方が良いです。
手を広げすぎるのも良くないです。
看護師からの転職を成功させる3つのコツ
看護師から行政保健師への転職を成功させるためにはいくつかのコツとポイントがあります。仕事やプライベートで忙しい中で計画的に長期的な目標を立てて対策を進める必要があります。
- 動機と志望理由を明確にする
- 年間スケジュールを立てる
- 公務員試験対策の計画を立てる
① 動機と志望理由を明確にする
動機と志望理由は面接で100%聞かれる項目です。
特に看護師から行政保健師に転職しようと決めた受験生の動機と志望理由は面接官も非常に気になります。
転職するために公務員試験を受験するのは勇気のいることで、思っていても行動に移せない人は大勢います。その中で『どうして自分は大変な思いをしてまで行政保健師に転職したいのか』を明確にすることで公務員試験対策自体へのモチベーション維持にも役立ちます。
② 年間スケジュールを立てる
公務員試験の勉強や対策のスケジュールはもちろんですが、プライベートな予定ももちろんあります。
その中にイレギュラーな予定が入ることになるので、大雑把で良いので年間のスケジュールを立てて可視化しておくことは重要です。
例えば、受験申込、試験会場、一次試験日、一次試験合格発表日、二次試験日、二次試験合格発表日などをすべて年間の計画に組み込み、勤務の調整や休日希望などを確実に行いましょう。
③ 公務員試験対策の計画を立てる
一番の目標は公務員試験に合格することです。
公務員試験は無計画にとりあえず対策をしておけば受かるほど甘くはありません。年間スケジュールを立てる際に、どの科目をいつから対策し、どの科目に重点を置くかをしっかり決めて計画を立てなければなりません。
受験する自治体や併願する自治体の有無によって自分に合った計画を立てることが非常に重要です。