- 看護師から行政保健師に転職するための方法について
- 公務員試験に合格するための具体的な行動プランについて
行政保健師に転職したいけど何をどう始めたらいいの?病院での看護師経験しかないけど行政保健師になれるの?働きながら公務員試験に合格できるの?
看護師から行政保健師への転職には人によって様々な意味や理由があると思いますが、本当に転職できるかどうか不安に感じている方は非常に多いと思います。
公務員試験は対策はもちろん重要ですが、しっかりとした情報収集をしないと有効で効率的な対策ができず合格から遠ざかってしまいます。
私が行政保健師を目指した頃はほとんど保健師向けの公務員試験の情報がありませんでした。また、看護師として働きながら公務員試験に合格できるのかどうかは未知の世界でした。
結論から言うと、看護師から行政保健師への転職は全然可能です!
私は大学卒業後から7年間病院で看護師をしていました。しかも地域看護学とはかけ離れた救命救急センターで急性期の現場にいたので本当に合格できるのか不安でした。
しかし、フルで夜勤もしながら独学で公務員試験に合格し行政保健師に転職することに成功しました。
この記事を読めば、看護師から行政保健師を目指す際にまずあなたが取るべき行動が分かるようになります。
看護師から行政保健師への転職は簡単ではありませんが、正しい情報と正しい対策と正しい努力があれば必ず成功できます。
▶行政保健師の勤務先などの基本的事項についてはこちらで解説しています。
▶行政保健師の給料事情はこちらで解説しています。
STEP.1 保健師の公務員試験について理解する
- 従来の公務員試験の内容
- 近年の公務員試験の内容
自治体によって出題内容や出題範囲は異なりますが、公務員試験を突破しないことには行政保健師にはなれません。
学生の頃から試験と実習まみれで国家試験も受けたので、もう試験はこりごりですよね。しかし公務員試験を回避して正規の公務員になる方法は残念ながらありません。
長らく臨床に居て、学生のような勉強から遠ざかっていて不安な看護師さんもいるかと思いますが、情報収集と対策さえしっかり行えば大丈夫です。むしろ面接や小論文は看護師としての社会人経験が大きな武器になります。
公務員試験は自治体によりますが、以下のように近年は傾向が変わってきています。
従来の公務員試験の内容
試験内容/自治体例 | A | B | C | D | E | ||||
一次試験 | 教養試験 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基礎能力検査(SPI) | |||||||||
専門試験 | |||||||||
小論文 | |||||||||
二次試験 | 面接① | ||||||||
面接② | |||||||||
グループワーク等 | |||||||||
適性検査 |
従来の公務員試験は表のA・B自治体のように
- 教養試験(文章理解・数的処理・社会科学・自然科学・人文科学)
- 専門試験
- 小論文
- 面接(自治体によって2回あったり集団討論などがあります)
- 適性検査(性格検査など)
で構成されていることがほとんどでした。もちろん現在も上記の構成をとっている自治体も多くあります。また、上記A~Eに当てはまらないパターンもあります。
この中で特に対策に時間がかかるのが教養試験です。
教養試験はとにかく範囲が広いです!
教養試験は以下の5科目20以上の分野に渡って出題されます。
- 文章理解➡現代文・英文
- 数的処理➡判断推理・数的処理・空間把握・資料解釈
- 社会科学➡法律/政治・経済・社会・時事/社会事情・人権問題・その他
- 自然科学➡数学・物理・化学・生物・地学・科学一般
- 人文科学➡思想・文学芸術・日本史・世界史・地理・国語・英語
さらに専門試験も別にあります。この専門試験は保健師には保健師用の専門試験が用意されています。
加えて小論文と面接が課されます。面接は自治体によって複数回あり、時に集団討論などを行い、適性検査(性格診断のようなものや単純作業の検査)も課されます。
ちなみに表では小論文を一次試験に分類していますが、二次試験の得点として採点されることが多いです。ただし、実際に小論文を書くのは一次試験の時に書く自治体が多いです。
例として、令和5年度の東京都特別区の保健師の公務員試験をみてみましょう。
一次試験の内容は以下のとおりです。
東京都特別区では、全職種共通の教養試験と、保健師用の専門試験、保健師用の論文試験という構成になっています。特別区の論文は他の自治体と違い、保健師用の論文課題が課されます。また、特別区では論文試験の点数は一次試験として採点されます。
二次試験の内容は以下のとおりです。
東京都特別区の二次試験は個別面接になります。最終合格は二次試験の点数のみで決定する自治体もあれば、一次試験と二次試験の合計点で総合的に決定する自治体があります。
東京都特別区は、一次試験と二次試験の合計点で総合的に最終合格者を決定する自治体です。
大体が作文と面接で済む看護師の就職とは大違いですね。
近年の公務員試験の内容
試験科目数の多さが理由で受験へのハードルが高かった公務員試験ですが、近年は大きな変化がみられています。それは試験簡略化による受験者数の確保と人物重視の試験にシフトする動きです。
試験内容/自治体例 | A | B | C | D | E | ||||
一次試験 | 教養試験 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基礎能力検査(SPI) | |||||||||
専門試験 | |||||||||
小論文 | |||||||||
二次試験 | 面接① | ||||||||
面接② | |||||||||
グループワーク等 | |||||||||
適性検査 |
具体的に言うと、膨大な試験範囲を誇る教養試験が廃止され、基礎能力検査(SPI試験)というものに変更し、【基礎能力検査(SPI検査)+小論文+面接+適性検査】という試験構成をとる上図のC~Eのような自治体が増えています。
場合によっては基礎能力検査(SPI試験)もなかったり、面接の回数が一回の自治体もあります。これにより、受験へのハードルがかなり下がり、看護師からの転職組も試験を受けやすい環境になってきています。
私は上の表で言うAとCの試験内容と構成を課す自治体を受けて両方合格しました。
STEP.2 保健師として就職したい自治体の情報収集をする
- 保健師の募集・受験資格・受験区分を確認する
- 採用年と公務員試験の試験日はいつかを確認する
- 受験する自治体の保健師区分の試験内容を確認する
公務員試験の概要を理解したら次は就職したい自治体の情報収集を行いましょう。
これは自治体のホームページで情報収集します。職員採用情報のページが用意されていることが多いです。通常、過去の受験案内や志願者数、合格者数、合格率、試験問題例が載っていますので、くまなくチェックを行ってください。
具体的には以下の点をまず押さえてください。
保健師の募集・受験資格・受験区分を確認する
自治体によって受験資格が異なります。保健師免許を保有している(新卒の人は採用年に取得見込み)ことは大前提ですが、年齢制限を設けていることが多いです。年齢制限については、近年拡大傾向にあり、35〜40歳くらいまで受けられる自治体も増えています。
受験区分については社会人経験枠かそれ以外かで考えれば大丈夫です。社会人経験枠が無い自治体もありますが、あったとしても基本的に<保健師としての実務経験を〇年以上有していること>が受験資格になっています。
看護師からの転職を考えている方は基本的に保健師としての実務経験は0年だと思いますので、新卒と同じ受験区分で受けることになります。
ライバルは新卒と看護師からの転職組だと思っていいでしょう。
保健師の公務員試験の受験区分には以下のように名前がついています。
- Ⅰ類 …東京都特別区
- 地方上級 …都道府県や規模の大きな市など
- A・B・C日程 …市町村など
これらは実はただの公務員試験の業界用語であり、各自治体が試験のレベルに応じて名付けているにすぎません。
地方初級や地方中級という区分も存在しますが、高卒レベルの試験内容の区分になります。保健師は大卒レベルなので一般的に地方上級と名付けられています。
募集要項を見ていると、「地方上級」に並んで「大卒程度」という区分も目にすることもあるかと思います。これは大卒程度の学力や資格を有する区分という意味合いで補足的に名付けられているだけです。
紛らわしいですが深く考えず、受験資格を満たしている保健師の受験区分を選べば大丈夫です!
採用年と公務員試験の試験日はいつかを確認する
臨時採用や社会人経験者枠の例外を除き、採用は基本的に翌年度の4月1日付けになります。必ず募集要項に書いてありますので確認しましょう。
看護師として働きながら受験をする場合、合格したら今の職場を退職することになるので師長には事前に試験を受けることを伝えておきましょう。
病院側とすると、例年9月くらいには次年度の職員採用計画を立て始めるので、自治体によっては合格発表後に報告をしても遅くはない場合もあります。
しかし、急に「公務員試験に受かったので辞めます。」と言われるよりは、事前に伝えておいた方がお互いに心の準備ができているので望ましいでしす。
同僚には試験を受けることを言う必要はありませんが、師長には伝えておきましょう。
試験日を押さえておくことも大切です。公務員試験は一次試験と二次試験に分けられるため複数回、別日で試験を受ける必要があります。
早いところで採用一年前の4月から試験がスタートする自治体もあります。
特別区は比較的早く、5月からスタートします。その他都道府県では6月のところが多く、市区町村はバラバラで、秋頃に実施するところや年明けに実施する自治体もあります。
基本的に他自治体間での併願は可能ですが、試験日が重複している場合は一つの自治体の試験しか受けることが出来ません。
例えば、2022年の静岡県内自治体の一次試験日を見てみると、
自治体名 | 一次試験日 |
---|---|
静岡県(県) | 6月19日 |
浜松市(政令指定都市) | 6月19日 |
静岡市(政令指定都市) | 6月19日 |
となっており、上記3自治体については一つしか受験することができません。
また、受験案内が出ている段階では二次試験日の日程が確定していない場合が多く、併願した自治体の一次試験日が別日であったとしても、二次試験日が重なってしまい、片方しか受験できないという場合もあります。
過去の二次試験の試験日も自治体のホームページでチェックするようにしましょう。
基本的に特別区は他の自治体と比べて早い段階で試験がスタートするので、【特別区+都道府県+市区町村】という組み合わせで併願をする人が多かったりします。
特に特別区は試験のリハーサルも兼ねて受験する人も多いので倍率が高くなりやすい傾向にあります。
受験したい自治体の試験日は過去のものも含め必ず確認しましょう。
受験する自治体の保健師区分の試験内容を確認する
自治体によって試験内容や構成が異なります。どんな試験が課されるのか必ず確認するようにしましょう。
試験内容/自治体例 | A | B | C | D | E | ||||
一次試験 | 教養試験 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基礎能力検査(SPI) | |||||||||
専門試験 | |||||||||
小論文 | |||||||||
二次試験 | 面接① | ||||||||
面接② | |||||||||
グループワーク等 | |||||||||
適性検査 |
先にも述べましたが、従来の公務員試験はA・B自治体のような構成が一般的でした。
現在はC~E自治体のように試験を簡略しているところが増えてきていますが、基本的に専門試験と小論文と面接、適性検査は大体課されます。
小論文は公務員として必須である文章読解力と文章作成能力をみるのに必要ですし、面接は言わずもがな、そして適性検査(性格検査)については社会人としての人間力やストレス耐性、業務適正を見る重要な検査です。
受験する自治体が課す試験内容や構成を整理しましょう。
STEP.3 公務員試験合格までのスケジュールを立てる
- 受験する自治体で課される試験内容や日程を整理する
- いつから公務員試験対策を始めるか
看護師から行政保健師への転職を目指している方は働きながら公務員試験を受ける方も多いでしょう。
公務員試験は付け焼刃で対策をして合格できるものではありませんので、しっかりと計画的に対策できるようにスケジューリングを行うことはとても重要です。
最初に試験対策の計画を立てるのは面倒ではありますが、試験科目が多く、試験日も複数回あるので計画は必ず立てましょう。
受験する自治体で課される試験内容や日程を整理する
例えば、令和5年度の東京都特別区と神奈川県、埼玉県川越市の3自治体を受験したとしましょう。それぞれの試験内容と試験日は以下のようになります。
特別区 | 神奈川県 | 埼玉県川越市 | |
---|---|---|---|
次 試 験 | 一【4月30日】 | 【6月18日】 | 【R6年1月14日】 |
教養試験 専門試験 論文 | 専門試験 | 基礎能力検査(SPI) 適性検査 | |
次 試 験 | 二【7月中】 | 【7月~8月中】 | 【R6年2月中】 |
面接 | 論文(一次試験で回答) 面接 グループワーク | 論文(一次試験で回答) 面接 | |
合否 | 【8月3日】 | 【8月18日】 | 【R6年2月下旬】 |
このように、複数の自治体を受験する際、合格までにある試験日と試験内容を一目で分かるように整理して、いつまでにどのくらいのペースで対策を進めていくのかというオリジナルのスケジューリングが必要になってきます。
スケジューリングは最低でも一か月単位、場合によっては月の前半後半の単位で設定すると修正しやすいです。
自治体によって若干出題の傾向や形式が異なることがあり、論文や面接については自治体の研究や情報収集がある程度必要になるため、あまりに多くの自治体を併願するのは時間の確保が難しくかえって効率が悪くなります。
併願は多くても3か所程度にしておくべきだと思います。
いつから公務員試験対策を始めるか
試験対策については、時間的余裕があったほうが望ましいですが、あまりに長い期間対策をしていると精神的に疲れてきてしまいます。
仕事やプライベートとの兼ね合いもあると思いますが、目安としては最低でも8か月くらいは確保したいところです。新卒組は実習や試験、アルバイトなどで手が回らなくなる期間が多いので一年前くらいからコツコツと対策を始めます。
複数の自治体を受験する場合、本命の自治体があると思いますので、遅くても本命自治体の一次試験日の8か月前くらいから対策はするようにしましょう。
私の場合は8か月前から対策を始め、仕事の日は2~3時間程度、休日は8~10時間くらい勉強していました。
▶いつから勉強を始めるかについてはこちらでもっと詳しく解説しています。
STEP.4 定期的に情報をアップデートしながら対策する
- 試験内容や募集要項が前年と同じとは限らない
- 進捗状況によっては計画を随時修正する
試験日の前日まで、受験する自治体のホームページを定期的にチェックするようにしましょう。追加の情報や変更点が公開されていることがあります。
また、自治体の大きな取り組みはプレスリリースで把握できるため面接や小論文対策のためにもこまめにチェックしておくと良いです。
試験内容や募集要項が前年と同じとは限らない
公務員試験の対策を始めた時点では、自分が受験する試験の受験案内がまだ公表されていないことがあります。
基本的には例年や前年の試験内容を参考にして対策をすることになりますが、公務員試験の試験内容は近年変化がみられているため、自身が希望する自治体の試験内容が変わる可能性が大いにあります。
事実、私が受験した2自治体のうち、一方の自治体がちょうど私が受験した年に教養試験から基礎能力検査(SPI)に移行した年でした。当然それまでは前年と同様に教養試験が課されると思い込み対策をしてきました。
ホームページのチェックは定期的に行っていたので、幸い受験案内が出て数日後すぐに気付くことが出来たので急いで基礎能力検査(SPI)の参考書を買いに行き対策を始めることができました。
また、受験したい自治体があったけど、昨年までの年齢制限に引っかかっていた場合でも次年度からは年齢制限を緩和するということもありますので念のため自治体ホームページで最新の受験案内を確認すると良いでしょう。
最新の情報収集は重要です。自分で情報を取りにいかないと誰も教えてくれません。
進捗状況によっては計画を随時修正する
公務員試験対策は基本的に計画通りにはいきません。進捗具合や試験内容の変化などもあるため、その都度計画を立て直して軌道修正することが大切です。
予定を立てたものの、思ったより対策が進まないということはよくあります。結果、他の試験科目の対策に手を付けられなかったという事態に陥ることがありますが、それではせっかく対策を頑張ってきたのにもったいないです。
センター試験で数学だけ頑張って95点とっても合格できないのと一緒です。
定期的に試験対策の進捗状況の振り返りをする時間を作り、残りの期間の対策をどのように進めていくか考えることをオススメします。
月に一度、30分くらいで全然大丈夫なので進捗状況の振り返りをしましょう。
全体を通しての注意点・アドバイス
- 情報は意識的に取得していく
- とにかくまんべんなく網羅的に学習する
情報は意識的に取得していく
看護師から行政保健師に転職を考えている場合、学生の頃とは違い誰かが受験に関する情報を教えてくれたり助言をくれたりするということがありません。
情報は自分で取得していくしかありません。ただ、知人で行政保健師として公務員試験に合格した人がいる場合、その人の助言を参考にしてフルに活用することが出来るのは大きな強みになります。
働きながら公務員試験の対策を行うことは結構な孤独な闘いでもあります。日々の業務が大変な中で、受かるかも分からない試験に臨むということは精神的に負荷のかかるものです。
自分が話せる人には試験のことを話したりするだけでも気持ちが楽になり、また頑張れるようになりますので応援してくれる人を作ることも大切です。
目標を誰かに話すだけでも気持ちが楽になりますよ。
とにかくまんべんなく網羅的に学習する
公務員試験は複数の科目をまんべんなく対策することが重要ですので、途中で一度客観的に自分の対策を見返してみる時間を作ると良いです。
意外と一つの科目に時間をかけてばかりいることがあります。そのような場合は一度全体を網羅的に手を付けてみるという手段も有効です。
全く手つかずの科目があるとどうしても気持ちに焦りが出てきてしまうため、一旦雑でもいいのでざっと目を通したり全体像を把握することで抵抗感や拒絶反応を軽減することができます。
例えば、一切小論文の対策をしていないのと、簡単に参考書を読んで一つでも小論文を書いてみた場合とでは、気持ちの余裕が全然違います。
広く浅くが公務員試験合格への近道です。
まとめ
- STEP.1 保健師の公務員試験について理解する
公務員試験の試験科目や内容や全貌、そして近年の傾向を把握しましょう。 - STEP.2 保健師として就職したい自治体の情報収集をする
自治体のホームページは唯一無二の貴重な情報源です。暇な時は隅々まで自治体のホームページ内を覗く習慣を付けましょう。 - STEP.3 公務員試験合格までのスケジュールを立てる
いつ、どこの自治体でどの試験があるかを可視化して、自分用の試験対策計画を時系列で立てましょう。 - STEP.4 定期的に情報をアップデートしながら対策する
試験内容の変化や自治体の大きなニュースを見逃さないよう自治体のホームページは定期的にチェックしましょう。